神社に守られているような澄んだ空気に満ちた心地よい日々
清塚恭史さん・美優さん(杵築市)
朝霧の里、安心院。森の中に佇む妻垣神社のすぐそば。
築古の趣を残しつつ暮らしやすく整えられたおうちでは、ぱちぱちと燃える薪ストーブの音と共にじんわりとした暖かさが広がります。
お気に入りのキッチンには珈琲の香りが漂い、土間続きの居間からは子どもたちの楽しそうな声が聴こえる。
時間をかけてたどり着いた地で時間をかけて作り上げた住まいは愛着もひとしおのようです。
節目、節目で見直してきた 暮らし方
関西から杵築市を経て宇佐市へ。
清塚夫婦が生活環境を改めたのは、一度目は2011年の震災のあと。二度目はお子さんが産まれるタイミングでした。
「僕と彼女は別府のAPU(立命館アジア太平洋大学)を卒業後、関西でそれぞれ働いていました。震災の被害を直接受けた訳ではありませんが、あの日以来、暮らしの価値観が変わりました。そして九州に帰ろうかなと思うようになり、宇佐市のお隣の山香町に移りました。気のあう友人も多く、心地よくてしばらく住んでいました」。
当時は二人で丁度良いこじんまりとしたお家でしたが、子どもが生まれるため広い住まいを探すことに。
ですが、決まりかけては頓挫を繰り返し、この物件と出会うまでに約5年もの歳月が掛かったそうです。
紡いできた想いを受け継いで
空き家は、すぐに住めるような家から廃屋に近い状態のものまで様々です。
多くの物件を見て回った中でも宇佐市の空き家登録物件は質が高いと思ったそうです。
「値段は少し高く感じますが、荷物が無く、整っていて見学しやすかった気がします。この家は大きな傷みもなく、こまめにメンテナンスされているのが伺えました。場所もすごく拓けていて静かで、隣にお宮があるので感覚的に守られている感じも心地いい。日当たりもすごく良いですよ」
と美優さんは語ります。
大事にされてきたお家を暮らし継ぐと決めたあと、恭史さんは改修工事のため、仕事終わりに通う日々を1年ほど続けました。
「地域の世話役の方が間に入ってくれて近所の方と交流できたのがありがたかったですね。やはり一度町の人と話してみるのがいいと思います。家の造りはいくらか変えられますが、環境は変えられないので」。
家族が越してくる頃にはウェルカムな雰囲気で迎えられたようで、引越しの際も安心したそう。
草刈りとなると地元の方達の協力でサッと終えてしまうそうで、そんな様子からも地域の方の絆を感じられます。
子どもたちも安心な環境
「おじいちゃんおばあちゃん世代が多く、地域の目も優しくて子育てしやすいですね。以前は車通りのある家に住んでいたので、その辺も安心」。
すずちゃんが小学校一年生、さらちゃんは2歳と遊び盛りの姉妹は、自然を相手に元気いっぱ いに遊んでいます。
院内・安心院地域では小中高一貫教育を実践しており、学校と地域が連携して子どもたちを見守ってくれています。
また、この町には温泉施設があるのも良い点。
以前、備え付けの給湯器が不具合を起こした際には近くの温泉センターに出かけたそうです。
気軽に寄れる距離感と地元民で賑わう素朴な雰囲気、広い湯船にゆったり浸かって体がほぐれる癒しのひとときは子どもたちもお気に入りの時間です。
春に向けて楽しみ広がる
結婚前から珈琲に関する仕事をしてい美優さんは、「ゆらぎ珈琲舎」という屋号で自家焙煎珈琲豆をお店に卸したりイベントに出店したりしていました。
長らく店舗を持たずに活動していましたが、母屋に隣接する納屋を改装し、珈琲豆の販売を主に、淹れたての珈琲と焼き菓子を味わえる小さなお店を開く予定です。
「豆にはこだわって有機の豆を使うようにしています。開業予定の春まであと少し、オープンの際は是非いらしてくださいね」。
次の芽吹きの季節には清塚家にとっても新たな日々のスタートになるようです。